2011年6月18日土曜日

”place”

いままで、Northeast Photographersに参加されているメンバーの作品を紹介してきましたが、もうひとり、福島さんの作品を書いていなかったので、今日は少しだけ。


福島さんの作品は、先ずプリントがとても丁寧できれいです。今回はインクジェットによるプリントを選んだのですが、自身で銀塩プリントも出来る方です。ここでいう出来るとは、今も日常的に行っていることを意味します。

タイトルは”place”、訳すと「場所」になります。これは彼自身が行っているプロジェクトのひとつで、歴史的に意味ある場所、そこで起きた出来事と現代との相関、そしてそこに暮らすもしくは集う人々の姿を通して、忘れかけている記憶やかつてあった痕跡、引き継がれた心や恐れといったものをスナップしようとしたものです。

今回の舞台は、広島、平和記念日の一日を撮ったものです。そして、そこに写されているのは原爆投下という悲劇そのものではなく、あれから約70年近くたった現在の日常です。ドキュメントではありません。かといって過度な感情移入もなく、淡々と写し撮られているように見えます。

僕がここから見えてくるものは、文化や暮らしぶりといった生活に関わるものについては、時代と共に変わってきているのだけど、歴史はもっと大きな影響力をもって人々の心の中に確実に根のようなものを残しているということです。つまり大きな衝撃や出来事、あるいは日本人としてシンボリックに感じるものが、自然の内にDNAとして組み込まれているのではないかと思えるのです。

展示の構成も良く出来ています。ひとつひとつの作品が、とても印象的に目に飛び込み、心に残ってくるような感じがします。なにより、押しつけではなく、自然に入り込んでくる感覚がするのは、プリントの良さがその一端を担っています。

目の前にしていると、デジタル、銀塩という前に、作品としての質や性格を見るべきと、言われているような気もします。

損得ではないけど、見ないと損をする、そんな類の写真なのです。

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