2011年6月5日日曜日

有り難いものって・・・。

現在会期中の Northeast Photographers “relation” in Miyagiでは、菊地豊さんによる1992年に撮影された「軍艦島」の作品が展示されています。展示作品以外に、1991年に出版した全点モノクロの写真集と軍艦島の1400分の1スケールのミニチュアモデルを参考展示しています。こちらがそのものです。


ミニチュアモデルは市販のものです。これを見ているとわずか0.1平方キロメートルにも満たない作られた島が、高度成長以前に存在していることに驚きを覚えます。所狭しと建てられた工場や鉄筋のアパートメントの中で、繰り返された日々はどんなものだったものだったのかはなかなか想像が付きません。


当時の最先端の暮らしぶりと同時に当時そのままの生活が営まれていたのでしょうが、始めの内はそのギャップに驚き、便利さを覚え、率直に快適だと感じていたのでしょうね。また、島内には学校や病院、その他娯楽施設も含めあったのでしょうから、そこでひとつの都市機能が完結していたのだと思います。だから、そこで暮らすこと自体、幸せで有り難いことだったのかもしれません。

そんな便利で豊かとも思えた暮らしは、1960年から1970年以降のエネルギー変換と施策によって衰退の一途を辿るわけです。時代がそうさせたとも言えますが、さらに豊かな暮らしぶりを目指そうとする時流から外され、いつしか無人の島へとなっていきます。

おそらく、ここに住んでいた人々にとっては、とても信じられない、夢にも思わなかったことだと思います。夢のような生活だったものが現実となり、果たしてそれらがまた無に帰していくことが信じられなかったに違いありません。

本当の豊かさって何だろうとかありふれた言葉では言い表せないけど、やはり、そんな単純で一番難しいことを考えさせられます。

有り難いものって、やはり有ること自体、難しいことなのですかね。

0 件のコメント:

コメントを投稿