2010年1月30日土曜日

素敵な一言

こういったギャラリーは、大抵、平日の昼には多くのお客さんはみえられないのが現状です。カフェなんかを併設していればまた違うのかもしれませんが、僕の場合はそんなに器用ではありませんので、純粋に作品を鑑賞し、楽しんだり、感動したり、これまで経験したことのない驚きとかを感じてもらえる場を提供しているわけです。


昨日もそんなのんびりとした時間が過ぎていました。数名のお客さんが帰られ、一息入れていた15時過ぎに、一人のお客さんが扉を開けました。現在のギャラリーは入口から2.5mほどカーテンで仕切られているので、その通路を過ぎたところでないと、お客様の顔を見ることが出来ません。

カウンターの中で出てこられる様子を窺っていると、現われた方はとても若い女性です。最近は学生の方もみえられるようになったので、大学で写真をしている人かなと思いながら、一通り見て回るまでは、声をかけずにいました。学生さんの場合、ほとんどの方が写真部に入っている方ですね。普段は仲間の写真や写真集等でしか他の人の写真と接していない方々ですので、このようなプロのオリジナル・プリントを間近で見ることは、貴重な経験になるわけです。

さて、一通り見終わった様子でしたので、ちょっと声をかけてみました。学生さんですかの問いに、はい、高校生ですと、まだあどけない笑顔を見せてくれました。エッと心の中で少しだけですが驚きました。なにより、女子高生が一人でギャラリーに来られることは初めてだったからです。それでも、以前からよく来られる高校で写真部の顧問をしている先生の紹介かなぐらいに、その時はそう思っていました。

でも、話をする内にそうではないことが分かりました。自分で写真は撮っていないけど、前から興味があり、携帯サイトで偶然ギャラリーを知り、一度来てみたくなったようです。それから、1時間ほど話をしている内に、なにやら携帯を覗きこみながら、電車の時間をちょっと、と言われました。電車?どちらから来られたのと聞いてみると、彼女の口から出た街の名は、確か宮城県の北部にある街だとおぼろげながら分かりました。

そう、電車に乗ってわざわざ来てくれたのですね。都心で通勤されている方には多分、分からないと思いますが、電車で移動することはこちらでは一仕事です。ましてや、この寒さですから。

このギャラリーは場所が非常に分かりづらいこと、3段ほど下がった階段の奥にある入口の鉄扉には30cm四方の看板が張り付けてあるだけで、ちょっと入るのをためらうような風体なのです。僕が言うのも変な話ですが、よく扉を開ける気になりましたねとの問いかけに、彼女は眼を細め微笑み、はにかみの表情を見せながら、場所も良く分からずに迷い、ようやく見つけた時も入り口で少しだけ躊躇しました、でも思い切って扉を開け、このような写真と出会えてとても良かったですと話してくれました。

昨日はこの言葉が全てでした。

彼女は見も知らない僕に元気をもたらしてくれました。

感謝です。

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