2010年1月23日土曜日

表現そして対話

昨夜NHK芸術劇場で、昨年11月に行われた明治座「晩秋」の舞台中継がありました。この舞台は、以前戯曲を読んだ時に紹介したものです。マキノノゾミさんが作・演出をし、主演が歌舞伎役者の坂東三津五郎さん、森光子さんが特別出演していて、国民栄誉賞受賞後の舞台として注目されたものです。


いつものように録画をセットしてから、放送時間が来るのを待ちながら、ソファーに寝転んでいました。実際見るのなら何も録画をする必要なんてないじゃないかと言いたい方がいらっしゃると思いますが、僕の場合、テレビ中継の場合は、繰り返し見るということが第一なんですね。つまり、一度見ただけだと、よく理解出来なかったような感覚がいつもつきまとい、残念な思いをしてしまう場合があるわけです。

録画して繰り返し見てみると、都度新しいものが見えてきたり、久しぶりに見た時なんかは、やはりその時との心持も変わってきているので、違う解釈が出来ることを面白く感じます。しかしながら、このやり方は本来の舞台の見方ではないと僕自身も分かっています。

やはり舞台は生で見るのが一番なんです。その場で受けた感覚や感情の揺れといったものは、演ずる役者さんが生み出す表現との対話により得られるものだと思っているからです。そしてそれは日常の空間の中で、テレビという媒体を通して見るものとは、明らかに違うものです。

また、これは芝居に限らないものだと思っています。アート作品の中にはその刹那的な部分に美を見出し、その場でしか得られないものをインスタレーションとして表現しているものが多いのです。そもそもインスタレーションの意味は、「展示」ですので、その場の空間や時間も含めて感じとって欲しいものであるはずです。

つまり、それは一方通行の表現では無いということですね。見る方と表現するものとの間には、自然のうちに、何らかの対話が発生しているのです。なので、誤解を生じたり、何か分からないけど良かったとか、心地よかったとか、自分には合わないとか、人それぞれの感覚が生まれるのだと思います。

さて、昨夜の芝居はというと、僕自身の年齢のせいもあるのだと思いますが、とてもしっくりきた良い舞台だったと思います。戯曲の言葉や雰囲気を壊すことなく、演出されていたと感じました。森光子さんは年齢による衰えは隠せませんが、それでも物語っている姿には、素直に感動を覚えます。

とても、元気になれた夜でした。

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