2009年10月6日火曜日

「見えていることの不確かさ」


「見えていることの不確かさ」

昨日掲載した中の、キーワードの一つです。

今日は、このキーワードについて少しだけ補足します。と言っても、トークの中でふと思いついたことで、これが正しい事とは思っていません。

僕は長年エンジニアとして、図面を見る機会が非常に多かったので、2次元の世界(平面)に描かれた図形から、実際の立体(3次元)を思い描くことが比較的容易にできます。少し前の建築家やプロダクトデザイナーの大抵の方は出来ると思います。少し前と書いた訳は、現在の設計手法として、初めから3次元世界(眼に見える世界)の中で設計を行うケースが主流となったため、あえて図面から3次元化する作業をあまりしなくなったためです。

一番上の画像は、12本の線で描かれた立方体で、「ネッカーキューブ」と言われているものです。
この図形は、一般的にはフレーム図と言われているものです。普通は視点から見えない部分の線を描かないことで図形が確定されますが、3次元の世界では面の要素を取り除くとこのような形になります。

この図形を見ていると、人間は下段の画像のような2種類の図形を、ある時間をおいて交互にみえるようになると言われています。複数の解釈を持つ多義図形を観察するとき、解釈は何度も入れ替わり、いずれの図形が本当であるかが分からなくなるわけです。

これは、視覚が脳の認識により行われているから起きていることを意味し、イギリスの動物行動学者のリチャード・ドーキンスは「利己的な遺伝子」の中で、「2、3秒これを見つめていると、向きがかわるだろう。さらに見続けていると、突然、またもとのキューブに戻る。脳が両者を交代させて楽しんでいるのだ。」と言っています。

さらに、人は自らの意識で目の前の対象を見ることも出来ます。
僕は、意識下、無意識下が混在しながら、その人自身の経験や知識も相まって、一つの物や情景が複雑に変化していくのだと思っています。

写真はその瞬間もしくはある時間軸の経過の中で、文字通り写実的に目の前にあるものを切り取ったものだと思います。しかし、そこで実際に見えたものが、そのまま絵として存在しているかと言うと、必ずしもそうではありません。そのことは、表層のイメージがそこに内包する真実を直接描いているわけではないことも意味します。

そして、そのことが、「mirror and window」へと繋がっていきます。

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