2009年12月1日火曜日

「過去のない男」

昨日は日中陽が射して、いくらか暖かい陽気にも関わらず、午前中は雑務に追われ、午後から買い物やらこれから予定しているハービー・山口イベント機器リハーサルの準備などでいつの間にか夕方になっていました。夕食後やっと一息付けましたので、久しぶりに映画(DVD)を見る気になりまして、この映画を選びました。



「過去のない男」アキ・カウリスマキ 2002年


アキ・カウリスマキは、以前、カルト映画の巨匠のような言われ方をしていましたが、この「過去のない男」はカンヌでもグランプリを取った作品で、美男・美女が出てくるでもなく、決してハッピーでもないんですが、妙に心に響く映画です。アキ・カウリスマキの映画シリーズには労働者(敗者)3部作と言われているものがあって、これは2作目に当たります。

ですので、ストーリーも展開も明るいわけでなく、セリフ回しもいつものように非常に淡々としていて、何が面白いんだと思われる人も多くいるはずです。それでも、映像的には非常に美しいし、人生そのものを感じさせてくれる役者の演技や表情を見ているだけで、その味わい深さに魅了されてしまいます。音楽にクレイジーケンバンドの「ハワイの夜」と「Motto Wasabi」が、あまりドラマと関連していないところで採用されていたりしているのも面白いところですね。

アキ・カウリスマキの作品を見ていると、やっぱり小津安二郎の影響が強く感じられるし、ジャームッシュやベンダーズなんかも思い起こさせます。そう考えると小津安二郎ってすごい人だったんだなと改めて分かるわけです。あの黒澤明が自宅で熱心に「東京物語」のビデオで見ていたほどですから。

さて、「過去のない男」を一言で表すと、人間再生のドラマということになると思います。不幸にして過去の記憶を失ってしまい、徐々に自分の過去を知るにつれ、先ず、それが本当に自分であると理解し、認めることが出来るかですよね。でももっと重要なのは、記憶を失ってしまった今の自分を理解してくれる誰かが、そこにいるだけで、人は生きていけるということです。

アキ・カウリスマキは、ドラマチックにそして声高に訴えるのではなく、日常の生活の中にこそ見出せるものだと、静かに語っているように思えます。

それにしても、僕はこのフィンランドの映画監督の名前をいつも正確に言うことが出来ません。あの、ちょっと変わったフィンランドの映画監督とか映画のタイトルを言ってしまいますが、そうそう分かる人はいないのが現実です。やっぱり好きな人や物はちゃんと覚えようと思います。

おっと、そろそろ会場に行かないといけない時間です。それでは、又、明日。

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