2009年9月16日水曜日

井上雄彦 「バガボンド」

昨夜放送された「プロフェッショナル 仕事の流儀」に、漫画家の井上雄彦さんが特集されていました。

井上さんは、「スラムダンク」や「バガボンド」、「リアル」等で著名な漫画家で、今更説明する必要はないと思います。近年では、2008年5月から東京上野の森美術館で個展を開催、今年熊本で巡回展を開いたばかりで、漫画家の枠を飛び越えた活躍をされています。

昨夜の放送では、「バガボンド」の創作の過程が映し出されていましたが、創作現場での井上さんの苦悩や困惑の表情は、表現者として生きることを自分の糧とし、それを継続して行わなければならない困難さを物語っていました。

「バガボンド」は、吉川栄治の小説「宮本武蔵」を原作としていますが、そのキャラクターや物語は井上さん独自の解釈の元、描かれています。番組では井上さんを語る(井上さんとのインタビューで自身が語ったことばを選んで)意味で、いくつかのキーワードを提示していました。

○手に負えないことをやる
○迎えに行く
○こぼさない

内容については、NHKのHPに載っていますので、興味がある方はそちらを見て下さい。

http://www.nhk.or.jp/professional/backnumber/090915/index.html

「バガボンド」は、ちょうど僕が漫画を読まなくなった頃に連載を開始しました。ですので、実際には最初の頃しか、目にしたことがありません。その時には、非常に画力もあり、一つ一つのコマ割が、それぞれ独立した絵として成立していると感じたことを覚えています。たまたま2日前に行った近くの中華料理屋で少し前の「モーニング」を見た時に、さらにレベルが上がっていることを知ったところで、番組の放映があったわけです。

番組から受ける井上さんの印象は、非常に内省的なアーティストだということです。いつも自分の心の内へ深く潜りこみ、ある種求道者のそれと近い感覚です。キャラクターと自分を同化するところまで自身を追い込み、白紙の原稿に向かい、下書き後に筆で描かれる線の1本1本には井上さん自身の思いが込められています。

番組の最後に、井上さんにとってプロフェッショナルとは、との問いに、「向上し続ける人」と答えています。そんな自然で、当たり前のことなのですが、井上さんの視線の先は、たぶんその高みというか、レベルが違っているのだと思います。また、番組途中に、自分の心を掘り下げて行くと、最後は普遍的な世界が広がり、そこまで行けるとなんとかなるというようなことを話していました。(違っているかもしれませんが)

この2つのことは、一見すると全く逆を意味しているように思われますが、実は密接に関連していることだと以前から僕は思っていました。思いがけないことでしたが、その内容についてはまた別の機会に書こうかと考えています。

0 件のコメント:

コメントを投稿