2010年12月16日木曜日

雪が舞い降りた日

昨日、ようやくと言うかやっと仙台の街に雪が降りました。朝から気温も上がらずに、時折小雨が降っていたのですが、午後過ぎにその雨が雪に変わりました。積もる程ではなく舞いながら肌に触れるとすぐ溶けてしまいそうな雪です。不思議なもので、気温は変わらないはずなのに、舞う雪の中を歩いていると寒さが弱まった気がします。


僕は学生だった3年間を、山形の米沢で過ごしました。仙台と比べると、今でも雪が多い町なんだと思います。その時住んでいた2階建てのアパートは、全員が学生で、かと言って寮のような交流も無く、ひとりひとりが淡々と暮らしていました。4畳半一間、トイレも台所も風呂も共同という今では見つけるのが難しいと言って良い、そんな類のものでした。そのアパートは、幹線道路から折れ、車がやっと2台通れる程度の小さな道の一番奥にありました。その先は一面の田んぼです。遠くには低い山並みが見えるだけです。ですから、稲穂が実る頃に、窓を開けると、よくある山間の田舎の風景そのものが目の前に広がっていました。

1年目の冬、一晩に1mほど雪が降ったことがありました。目覚めた後ウトウトとしながら、朝日が差し込む窓を開け放つと、ちょうど窓枠の下側ぎりぎりまで積っています。これ以上積もると、雪が部屋へなだれ込んでくるような感じでした。

そうして、それと同じ高さで、目の前の田んぼが雪で覆われていました。僕はしばらくの間、何も言えずにじっとその景色を見つめていました。寒さも忘れ、茫然としていたように思います。

朝日を受けた雪面はきらきらと乱反射し、遠くの山並みの頂きも雪化粧され、空は雲ひとつない青一色です。足跡ひとつない雪面は、自然の織りなす微妙な曲面を帯び、人工的には作りえない美しさがありました。まだ何者ではなかった自分(今もそうですが)と何物にも侵されていない白一色の世界をどこかで重ね見ていたのかもしれません。若さゆえの感傷です。

そんな自分も年を重ね、そんな雪面にいろいろな足跡を残しながら生きてきたように思います。これも人工的には出来ないものなのでしょうが、出来れば少しでも何かが感じられるような形になっていたら良いなと思います。

これから先も・・・。

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