2009年8月26日水曜日

“法王庁の避妊法”

“法王庁の避妊法”、とても変わったタイトルですよね。

休廊日に、5度目となるDVD観劇をしてしまいました。2003年ホリプロが企画、制作し、世田谷パブリックシアターで上演されたものです。

この芝居は1994年、同名の小説を飯島早苗さんと鈴木裕美さんが戯曲化し、自転車キンクリートによって初演されました。その後、さまざまな劇団により公演されている現代演劇を代表する作品のひとつです。

内容は、オギノ式で有名な月経周期に関する「荻野学説」の発見までの過程を、荻野久作とその周囲の人々との関わりを通して、コミカルにそして非常に暖かい視線で描かれています。

全編に渡って女性に関わる事柄ですので、女性の劇作・演出家の2人で戯曲化したことが、非常に繊細で、優しさに溢れた作品になっている所以だと思います。

しかも演ずる役者は、まるで当て書きをしたかのように登場人物と一体化していて、飽きることがありません。特に、荻野久作演ずる勝村政信さんは医者として、研究者として、何より一人の人間としての強さや弱さを、存在感ある演技力で演じ切っていて見事の一言です。

妊娠、出産は人間の生命の価値についての大テーマだと思います。その価値観も置かれた立場や境遇によって人それぞれです。僕は舞台上でそれぞれの意見を対比、提示させられる度に、あたかもそのことが自分自身の命題でもあるかのように突きつけられている思いがしました。

現代の日本は閉塞感が被い、非常に生きにくい世の中になっていますが、この作品からはより根源的な人の尊厳や生きることの希望のようなものも考えさせられます。

しかし、芝居自体は難解なものでもただ高尚なだけのものではなく、どなたでも楽しめるものです。
つまり、それが脚本の良さなのです。

この芝居はDVDとして市販もされています。

機会があれば、是非ごらんになって下さい。

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