2009年9月30日水曜日

「古い脳」、「新しい脳」

昨夜、以前紹介した”味のある話”(爆笑問題のニッポンの教養)のアンコール放送がありましたので、また見てしまいました。出演していた九州大学大学院教授である都甲潔さんは全然学者然とした所がなく、楽しいし、なにより重くないのがいいですね。

僕は、結構再放送をみることがあります。(もっとも、自分の興味や関心のある場合だけですが)それは、僕自身、その時感じられる許容範囲が狭いからだと思います。簡単に言えば、理解度の深度が浅いので、気付かないことが多いということです。

映像やテレビのように、リアルタイムに流されているものは、その場では繰り返し見たり考えたりすることが出来ません。常に集中して、そこで語られる言葉や表情に耳を傾けたり、凝視していても見逃してしまうものです。

しかも、人の記憶の曖昧さ(この頃は以前に増して酷くなっているような気がします)は、全く逆の認識を持つ可能性があるので、それを確認する意味で再放送されたりすると見てしまうのだとも言えます。

昨夜は、「古い脳」と「新しい脳」についての見解や味覚と言うマイナーな分野と人類の進化を結び付け、さまざまな方向から研究している所が再認識出来て、とても面白かったですね。

「新しい脳」が経験や学習により発達し、「古い脳」とせめぎ合いをすることで、味覚を変化させる要因になるという点は、何もそれだけに適用されるものではなく、生活と言うか、人の営みの全般に言えることだと思います。いわゆる「好み」なんかもその一種ですね。
年を取るにつれ、「好み」が変わるというのも、そんな「新しい脳」の活性化によって表れるような気がします。

又、芸術家やアーティストも、首尾一貫自分のスタイルを貫くこともありますが、徐々に変化していくことが常です。その多くは経験や学習によるもので、やはり「古い脳」とのせめぎ合い(葛藤)から、生み出されていくものなのでしょう。

2009年9月29日火曜日

「ロマンチック」 佐内正史

「つばさ」最終回の時に、写真家の佐内正史さんについてほんの少しだけ触れましたが、今日は彼が出した変わった写真集を紹介します。

上のイメージですと、大きさがつかめないかもしれませんが、いわゆる文庫サイズで出来ています。最近は、個人の趣味でフォットブックの制作が行われるようになり、ネット上での製本やラボでも作れるようになりました。これまでアルバムという形で写真を貼り付けていたものから、何かの記念や記録として、一冊の本としてまとめることが増えてきたように思います。これもデジタル化の恩恵でしょうね。
これはそんなフォトブックのような写真集とも言えます。

「ロマンチック」 著・佐内正史 朝日文庫 2006年刊行

出版社、著者のない紹介には、”いまや若者の間で絶大な人気を誇る写真家・佐内正史。特に女性を魅力的に撮ることでは定評がある佐内氏が、ごく普通の、しかしちょっとドキッとするような「可愛い娘」をモデルにつづったフォト・ストーリー。「小説トリッパー」で好評を博した連載「眼差し」を改題し、オールカラーで再構成。ポケットに入れてどこにでも連れてゆける「あなただけの彼女たち」の「プライベートア ルバム」!” とあります。

最初にこの写真集を手にして見た時に、「a girl like you~君になりたい。」の対極だなと感じました。
撮られている女性は、全て佐内さんの友達であり、素人の方々です。一枚、一枚のイメージには、何かぎこちない空気感があります。たぶん、佐内さんと女性との距離感や撮る側と撮られる側との間に起こったある種の気恥ずかしさのような感覚が、さりげない表情の中に写し出されているからだと思います。

僕はこの写真集を新宿の某大型書店で購入した後、早めの夕食を軽く取り、芝居を観にいったのですが、帰りの電車の中で取り出して見ると、数ページ進んだところで隣に座っている男性が気になって仕方ありませんでした。

ヌードやエロな部分が一切ないイメージですので、特に覗き見られても恥しいわけではないのですが、それらのイメージの多くは見られてはいけない甘い記憶のように感じられたからかもしれません。
それ以降、何度か持ち歩き、電車の中で見ようとしましたが、結果は同じでした。

そんなわけで、どこにでも連れてゆけないじゃないか、と文句を言いながら、今でもたまに部屋でこっそりと見ているのです。

2009年9月28日月曜日

最近とても気になる人

最近、絢香が気になってしかたがありません。以前から彼女の歌を好んで聴いていたわけでもないのに、この頃は”YouTube”などでよく見ています。デビュー当時から年齢にそぐわぬ楽曲の良さや声自体の持つ強さや心地よさ、そして何より豊かな表現力には眼をみはるところがありました。

絢香はまだ21歳、デビュー4年にして、アイドルではなく、ソングライターとして、同世代だけではなく幅広い共感を得ているように思います。彼女がぽっと出のかわいいだけのシンガーではないことを知ったのは、2007年暮れにBS-i(現BS-TBS)で放送された”「SONG TO SOUL 永遠の一曲」キャロル・キング特集でのコメントを聞いたときでした。

彼女は高校2年の春から、福岡にある音楽スクールで楽曲制作の指導を受けに、毎週大阪から新幹線で通っていたそうです。ある時、先生からキャロル・キングの”I Feel The Earth Move”1曲だけ入ったMDを渡され、それを帰りの新幹線で繰り返し聴きながら、フレーズやコード進行を分析したとのことでした。

その後TBS「情熱大陸」の中で、ビートルズなど著名な曲の分析やレコーディングでの曲へのこだわりを見ていると、彼女がソングライターとして常に聞く側を意識して楽曲制作していることが分ります。このことは、自分が楽しいだけではなく(もちろんそれも大事だと思います)、プロ意識が明確であることを意味しています。

今年4月に入籍、病気による休業を発表してから、メディアの取り上げ方が変化しています(事務所側の意向もあるのでしょうが)が、僕は彼女の行動や言動に変化を感じません。むしろ、休業までの残された時間をいとおしみ、今ある自分に真摯に向き合っている姿勢が心を打ちます。

絢香には悲しい後ろ向きの歌は似合いません。自分を信じ、笑顔を絶えず、前向きに生き続ける意志を持って、自分を表現していることが一番の魅力だと思います。そして、それは決していきがったり、肩肘張ったようなものではなく、現時点での等身大の姿を見せていることで、ますます聞き手は共感を持つわけです。

娘のような年ごろのシンガーに何を肩入れしているのかと思うかもしれませんが、結局良いものは良いとして、素直に受け入れているだけです。これから先、彼女の人生にとってとても重要な日々を送っていくのでしょうが、またいつか元気に歌っている姿が見られると思います。

絢香のデビュー曲そして休業前のラストシングルで描かれた世界観は、ほとんど変わっていないように感じます。自分と他人とのつながり、信じることそのものの力、空、それぞれのキーワードになぞらえ、今ここに或ることへの幸せを体現しているように、僕には思えます。

http://www.youtube.com/watch?v=nKpD254gx-w

2009年9月27日日曜日

知ることの楽しみ

僕はギャラリーとして企画展を開催することの他に、出来る限り写真家本人やギャラリストとの交流の場を作っていきたいと思っています。その為、さまざまな企画をあれこれ考えています。

現在、予定している企画は次の通りです。

○高橋和海フリートーク&ポートフォリオレビュー 10月4日(日)
○第2回ファインアート・フォトグラファー講座 11月15日(日)
○ハービー・山口スペシャルイベント 12月13日(日)

年内は、毎月行う予定になっています。各企画ごとに、対象の方に違いはありますが、写真を通して色々な方向から、皆さんが楽しめるようにしたいと思っています。

これは、ギャラリーを始めるに当たって、最初から意図していたことです。僕自身も、さまざまな作品を見にギャラリーや美術館等に行ってましたが、自分だけの感覚で作品を評価していくことには限界があると感じていました。また、ネットや本などで写真家や作品の情報を手に入れても、それは一般的な表層でしかなく、何か腑に落ちない部分もありました。

そんなこともあり、写真家やギャラリスト、キュレーターと交流出来る機会があれば、参加したいと思い始めました。それでも、最初の内は、話を聞いても理解できるだろうかとかお金を払ってまで聞くことかとか、色々と思いはめぐりました。

でも、取りあえずは、何回か見てから結論を出せばいいかと、とても気楽な気持ちで参加するようになりました。
そうこうしている内に、自分自身いくつか分かったことがあります。

○ほとんど面白味がない企画でも、ひとつぐらいは心に引っかかるものがある。
○積極的にアンテナを張り、自分自身に投資出来なければ、自分が欲するものは得られない。
○偶然に起きていると思っていた多くの事は、これまでの必然の中にすでにあったことで、それに至る考え方や捉え方を知らなかっただけである。

そして、知る楽しみには際限はないということです。

現在、来年以降の企画も検討をしているところです。(まだ、僕の頭の中にあるもので、具体性を帯びていないものばかりですが)

前述している企画については、現在募集中です。ご意見、問い合わせがあれば、気軽に連絡して下さい。

2009年9月26日土曜日

「つばさ」 本日最終回

NHK朝の連続小説「つばさ」が今日で終了しました。通称「朝ドラ」と言われるこの番組は、1961年に始まったといいます。僕が物心ついた頃には、すでに開始されていましたが、最初から最後までほぼ毎日見続けたのは、今回が初めてかもしれません。

これまでの朝のこの時間には、ほとんど会社にいたり、通勤時間だったりしていましたから、滅多に見る機会はありませんでした。しかも、一回が15分、一回読み切りってわけではないので、続けて見ないと物語の筋も追えないこともあって、結局は見なくなってしまったように思います。

今回の場合、1週間ごとに一つのタイトルが付けられ、その内容に沿い物語が進み、かつ次週へつながるような感じになっていました。(今までのものを見ていないので普段からそうなのかが分りませんが)脚本の人は大変ですね。全体としての流れを意識しながら、毎週、毎週つじつまがあい、違和感なく見続けられることを考え、それでもって、1回15分の中にはそれなりに山場を作らなければなりませんからね。

最近の傾向なのでしょうか、幅広い分野でキャスティングされていました。もちろん、ヒロイン役の多部さんは新人なんでしょうが、周りの役者は、テレビや舞台、音楽、漫才等でそれぞれ活躍されている個性的な方が多かったです。

脚本の戸田山雅司さんは、テレビや映画の仕事が多く、最近の映画では「相棒」が有名です。ヒット作を量産されている人なので、今までの朝ドラとはちょっと違った感じだったのではないかと思います。

僕が注目していた役者は、お隣の奥さん役だった広岡由里子さんです。この女優さんは、舞台上ではごく普通のような感覚で、当たり前に変なことをしている、とてもユニークな方です。いつもは、自分の世界に行っちゃってるような所もあるのですが、やはり朝ドラということもあり、微妙に変な部分でのアクセントにとどまり、全開まではいっていませんでしたね。

それと、タイトルバックに、写真家の佐内正史さんが起用されていました。佐内さんは現在自身のレーベルで写真集を刊行し、作品発表を行っている稀な人です。タイトルバックが流れた時に、直感的にあれっと思ったのですが、制作の名前でそうなんだと思いました。それは、以前見た写真集「a girl like you~君になりたい。」の雰囲気にそっくりだったからです。とても、多部さんの魅力が出ていて良かったように感じました。

制作期間も含めるとほぼ1年がかりの作業でしょうから、スタッフや出演者は一言では表わせない程、苦労されているでしょうね。朝ドラ自体をアートだとは思いませんが、継続し創造し続けなければならないことは、ある意味共通している部分であると思います。

2009年9月25日金曜日

女性は元気だ!

先日楽天イーグルスのことを書きましたが、色々なスポーツ界の多くが終盤を迎えています。それに伴いプロスポーツにおいては、来期のスタッフ・選手や構想が検討されてきています。

先日も「ハマのおじさん」こと横浜ベイスターズの現役最多勝投手、工藤公康選手が来期契約されないとの記事が出ていました。また、Jリーグでは、「ゴン中山」ことジュビロ磐田、中山雅史選手が来期も現役続行の意思があることを表明していました。

来年で工藤選手は47歳、中山選手は43歳になります。一般のサラリーマン世界では中堅から上になり、自分の仕事がやっとできる状態のような年齢ですが、スポーツ界ではそうそうこの年齢まで現役で行うことは現実的に難しいですね。なにせ体力の衰えは絶対に表れるし、経験や知識だけで若い選手たちと一緒にプレー出来ません。

僕の場合も、これらの選手と比較は出来ませんが、何か行動を起こそうとした時の自分の想像と現実とのギャップに愕然とすることがあります。(主に、体力的なことですが)こんなはずじゃなかったのにと思う一方、やはりもう少し年齢を考えないと感じながら、体力的な衰えに対してじたばたともがいているような気がします。

さて、来年2月にバンクーバーで冬季オリンピックが開催されますが、もし今大会の代表に選ばれれば、5大会連続で出場となる選手がいます。皆さんもご存じだと思いますが、スピードスケートの岡崎朋美選手ですね。

1998年長野オリンピックで日本短距離界では初めてのメダルを獲得し、「朋美スマイル」で全国的な人気者になったのを今でも思い出します。その後の2回のオリンピックでも入賞していますし、今だ体力衰えずといった感じです。2007年には結婚もして、心身ともに充実している岡崎選手も今年で38歳です。

今回で5度目のオリンピック出場挑戦ということは、単純に約20年もの間、現役としてトレーニングを行ない、常にトップの位置にいたわけです。しかも基本アマチュアですので、本業は別にあるのですから、競技に対するモチベーションの維持は相当なものです。

話を聞いただけで、感心を通り越して、感動すら覚えます。代表は年内の大会結果で決まるようですが、是非、代表となって欲しいですね。

それにしても、8月に行われた世界柔道やレスリング吉田沙保里選手の世界選手権7連覇といい、女性が目立って元気だと思うのは、僕だけでしょうか。

2009年9月24日木曜日

情感が表情に表れること

シルバーウィークも終わり、ギャラリーの前の通りには、いつもにも増して車の往来が多いように感じます。また、地下鉄や近くの会社に向かう人々の表情は、いつもの日常的な朝の顔に変わっています。

そんな顔の表情について、少し前に読んだ本で面白いことが載っていました。顔の表情は大脳皮質が関与し、いろいろな部分を動かしていることが分かっています。それでも、大脳皮質に制御されにくい部分もあり、コミュニケーションにおいて表情を誤魔化せないことがあるようです。

その顕著な個所が、眼輪筋だそうです。昔から「目は口ほどにものを言う」と言いますが、どうやら本当のようです。僕たちは日常で人と会話し、その会話の中で感情の動きが表情として表れるわけですが、なかなか仕事なんかでは、情感を表情としてストレートに出すことが出来ない場合が多いですよね。むしろ、それを隠すことが大事だったりもします。

この研究結果は、「目は口ほどにものを言う」といわれる以降に判明されたことなので、顔における表情の象徴として自然と目が意識されていたことが分ります。

さて、それでは役者はどのようにして表情を出しているのかを考えてしまいました。

役者は、大抵の場合、決められた脚本があり、その登場人物の性格や置かれた状況を考え、場面、場面によって、演出家の意図を組み入れた演技として言葉や表情で一瞬、一瞬を表現しています。

僕は、その芝居がリアリスムであれ、そうでないものであれ、ある意味演ずる人物と役者が同化しなければ、観る側に感動や感情が伝わってこないものだと思っています。但し、役者と言うものは、自分以外の誰かを演じることに特異な才能を持っていたり、それらの教育を受けた人たちとも認識しているので、それが自然に表れた表情であるかは疑問ではあります。

そこには、テクニックや経験も存在しているわけです。テレビで数秒後に泣くこと(涙が流せる)ができる女の子が出演していましたが、あれは技術以外の何ものでもありません。
それを見ただけでは、感心はしますが、感動はしません。

でも、結果として観る側に感動を与える芝居においては、表情や言葉が自然に表れているものではなく、演技として導かれたものとしても一向に構わないのではないかと思います。
表情の豊かな役者は数多くいます。その多くは稽古や演出、自身の経験によって演技し、芝居の中で自然に表情が表れているのだと思っています。

まぁ、その時に大脳皮質が云々ということは議論されないはずですが、研究することは面白いことです。それはむしろ日常的に演技?している普通の人にとって、有益な何かをもたらす可能性があると思うからです。