2009年10月29日木曜日

昨夜のお供は、~Norah Jones~


写真展準備も、昨夜作品タイトルのキャプションを取り付け、ほぼ終了。その後、ひとりギャラリーでミュージック・ビデオ(DVD)を見ました(聞きました?)。

Norah Jones 「LIVE IN NEW ORLEANS」2003年、EMIミュージック・ジャパン

2002年8月にニュー・オリンズのハウス・オブ・ブルースで録音された今作品は、ライブハウスという箱の小ささもあって、非常に普段着のノラ・ジョーンズが見られて、僕の好きなDVDの一つです。

映像的には、カメラワークも凝っていない(ステージも狭いのでいたしかたない)し、必見のステージかと言うとそうではないのですが、なんかとても親密な雰囲気でリラックスした姿が見られ、こちらとしてもいざ見るぞと構える必要がありません。

だから、ノラ・ジョーンズの名唱や素晴らしいコンサートを期待する方にはお勧め出来ません。でも、何故かホッとします。

ノラ・ジョーンズと言えば、父親が世界的に有名なインドのシタール奏者、ラヴィ・シャンカールですが、今から15年ほど前にインドへ行った時に、仕事の合間を縫って、ラヴィ・シャンカールのカセットテープを買った覚えがあります。レコード店とおぼしきそのお店には、レコードよりもカセットテープが所狭しと並んでいました。インドに限らず、東南アジア各国では、当時はまだカセットテープが主流だったように思います。

そんな家庭環境もあり、ノラは幼いころより音楽との関係を深めていきました。最も影響を受けたシンガーはビリー・ホリデイで、「ユー・ゴー・トゥ・マイ・ヘッド」が大好きだったそうです。音楽に関して言えば、かなり早熟ですね。

デビューアルバム "Come Away With Me" をブルーノートからリリースしたのが、2002年2月ですから、それから半年しか経っていないデビューしたてのノラ・ジョーンズが見られる映像という点では貴重なDVDなのかもしれません。

さて、ハービー・山口写真展でも、BGMを用意しています。HP上で書いたように、皆さんがお持ちになる音楽もおかけしますが、それ以外のときはずっと流れています。

それも含めて、楽しんでもらえればと思っています。

2009年10月28日水曜日

「女殺油地獄」

この4、5日程、昼間は外出、帰ってきて写真展準備と何かと落ち着かない感じでしたが、昨日夜に、先週録画していた「女殺油地獄」(NHK芸術劇場)をやっと見ました。

「女殺油地獄」と言えば近松作品の中ではかなり変わったもので、人形浄瑠璃として初演、その後歌舞伎で上演されましたが、不評であった為、一旦お蔵入り、明治になるまで再演はされなかったそうです。その後、明治に歌舞伎として再演された後は、歌舞伎はもとより数多く映画化されたり、テレビドラマとしても放映されるようになりました。(潤色されたりしますが)

ごく最近では、これを原作とした「ネジと紙幣」が森山未來主役で舞台化され、仙台でも地方公演として行われたばかりです。こちらは未見ですが、演出・劇作が倉持裕さんですので、より奇妙にぐちゃぐちゃしたものになったように想像出来ます。

先週放映された「女殺油地獄」は、上方歌舞伎です。今年6月に東京・歌舞伎座で上演、片岡仁左衛門が「一世一代」(演じ納め)とうたって取り組んだ舞台でした。番組冒頭でのインタビューでは、この上演を最後に主人公である与兵衛を演じないとわざわざ宣言しているにもかかわらず、意外にもあっさりとその経緯を話した後、与兵衛という人物像や作品全体を非常にやさしい言葉で分析でもするように語っています。それは、逆に片岡仁左衛門の役者としての深さを感じさせるに十分なものでした。

僕はほとんど歌舞伎を見たことがありません。この歌舞伎も実は初見でしたが、映画や舞台で観たりしていて、ストーリーを知っていたこともあり、とてもすんなりと入ってきました。やはり、事前の経験や学習は大きいものです。

それにしても、自堕落で放蕩な男、与兵衛が、結局は借金のために隣の油屋の妻を殺してしまうと言う本当にどうしようもない話なのですが、片岡仁左衛門が演ずる与兵衛は何か憎めない悪党でもあり、時にかわいくも見えたりします。もちろん原作の良さもあるのでしょうが、やはり、役者の力量によるものが大きいなと再認識させられました。

日本には滅びの美学というか、死に対してもそのありように意味を持たせる(宗教観ではなく)傾向のように思います。この作品も最後の殺人をおこす場面が見せ所となります。与兵衛が凶行に及ぶまで、そして殺人を起こしてしまった後、フッと我に変える、その時々の表情の移り変わりは見事の一言です。また、油屋の妻、お吉が背をのけぞらせながら死んでいくのですが、その形が、まさに歌舞伎なんですよね。

それからこれは上方歌舞伎なので、ゆったりとした関西弁で進みます。その響きの心地よさも手伝ってか、後味の悪さが薄れ、なぜか物語としての美しさ(はかなさにも似た)を感じてしまいます。明治の時代から再演を繰り返し、現在へ繋がっている理由もそんなところにあるのかもしれません。

やはり、良いものは良いということです。でもそれは、伝える人や物や場がなければ、そこで止まってしまいます。だからこそ、良いものを良いと素直に認め、伝え、残すことが大事なんだと思います。

2009年10月27日火曜日

ほぼ展示終了~愛の溢れる空間へ

展示が昨日でほぼ終了しました。

久しぶりに体を動かしたことで、運動不足を改めて実感しつつも、心地よい疲労感の中、展示後のスポットに照らされている作品を見ていると、自然とモチベーションが上がる思いがします。

初期の「LONDON」から「静かなシャッター」までの代表作が並べられている光景には、ハービー・山口氏の一貫したスタンスが感じられます。人に対しての優しさ(自分を含めて)や想いが一杯詰まったこれらのイメージは、気持ちを豊かにしてくれます。

写真集としてまとめられた『LONDON-Chasing The Dream-』は、夢を追い求めての副題通り、ハービー・山口氏自身の原点であり、青春の軌跡のようなものです。

新装版の表紙である煙草をくゆらすジョー・ストラマー、アトリエで頬杖をつくヴィヴィアン・ウェストウッド、クリケットに励む女学生などの作品には、時代性とともに美しくも希望に満ちた情景が色濃く写し出されています。

その後の「PEACE」、「静かなシャッター」における若者の笑顔、こどもやお年寄りの姿には、まだまだ世の中捨てたもんじゃないよと言った肩ひじ張らない素直な思いが感じられ、きっと元気や勇気がもらえるのではないかと思っています。

また、「代官山17番地」の代表作であり、DMやチラシのイメージに使用している作品は、大判(960×1200mm)で展示されています。ゼラチンシルバープリントの質感は、大判であっても損なわれることがなく、むしろその表現の確かさに驚かれるのではないでしょうか。

今日もまた宣伝の様になってしまいましたが、今ギャラリーは、「The Big Love」のタイトル通りに、愛に溢れる空間に生まれ変わっています。

皆さんの笑顔にお会いできることを、楽しみにしています。

2009年10月26日月曜日

作品搬入、展示作業真っ最中!

ちょっとバタバタとしています。

昨日午後、ハービー・山口氏の作品搬入があり、荷受、開梱、作品確認を行いました。今回の展示点数は31点になります。内、大判(960×1200mm)が2点あり、スペース的には結構ぎりぎりになるかと思いますが、出来るだけ余裕があるような感じにしたいと思っています。

作品を1点、1点見ていると、クオリティーの高さと写真本来持っている力のようなものを感じます。なにより、作家としてのスタンスを明快に伝わってきますので、どの世代の方にも受け入れられるのではないかと思います。

販売する写真集も決定しました。今年再販された「LONDON-Chasing The Dream-」の新装版になります。ハービー・山口氏の原点とも言えるロンドンでの10年間がここに凝縮されています。また、この新装版には特典として、ハービー・山口氏のロンドン在住時のスペシャル・フォトプリントが巻末についていますので、とてもお買い得です。

収録されているイメージのいくつかは展示作品として見ることが出来ますので、オリジナル・プリントとの比較も楽しでいただけるのではないかと思っています。

詳細については、追ってHPに掲載していきますから、今しばらくお待ちください。

なんか、今日は現状報告と宣伝になってしまいましたが、期待に違わぬ展示内容になることは間違いないと感じていますので、多くの皆様に見ていただきたいと心より願っています。

短いですが、今日はこれまでです。

2009年10月25日日曜日

奇跡

残念ですが、奇跡は起きませんでした。

昨日のプロ野球パリーグCS第4戦が、楽天での野村監督最後の試合になりました。日本ハムのスレッジ選手に始まって、スレッジ選手に終わった感がありましたが、短期決戦と言われるものには、何かそんなツキもある選手が出るものです。

野村監督の試合後インタビューの中で、人間何を残すかが大事、そして教え子のような選手やコーチを残すことで、少しは野球界に貢献したかなと言う意味の言葉が非常に印象に残りました。両チーム合同でのグラウンド上の胴上げも、野村監督だからのことだったと思います。

もうひとつ、今週、奇跡は起こらなかったと話していたのが俳優の長門裕之さんです。そう、3年以上介護を続けてきた妻、南田洋子さんの死去です。南田洋子さんは3年前、認知症により女優を引退し、その後長門さんが介護を続け、その様子はドキュメンタリー番組として放映されました。

つい、2週間前の映像を見ると、何か普通に戻った様子で、僕自身非常に驚きました。その矢先の出来事だったので、会見の様子はとても見ていて痛々しかったです。長門さん自身とうに覚悟はあったと思いますが、目の前に現実を突きつけられた時の感情は何事にも及ばないものです。

井上ひさしさんの名作に「きらめく星座」という芝居があります。何回目の再演の時かは覚えていませんが、すまけいさん演ずる広告文案家、竹田にこんなセリフがありました。

「水惑星だからといって、かならず生命が発生するとはかぎりません。しかし地球にあるとき小さな生命が誕生しました。これも奇跡です。そのちいさな生命が数限りない試練を経て人間にまで至ったのも奇跡の連続です・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・わたしたちがいる、いま、生きているというだけでも奇跡中の奇跡なのです。こうして話をしたり、誰かと恋だのけんかだのをすること、それもその一つ一つが奇跡なのです。
人間は奇跡そのもの。人間の一挙手、一投足も奇跡そのもの。
だから人間は生きなければなりません。」

あまりにストレートな言い回しなので、何か気恥かしい思いがする人もいると思いますが、井上作品の根底に流れている一節だと、僕は思っています。人が感情の生き物である限り、落ち込んだり、へこんだりすることはままあるわけで、時にこんな言葉を思い出しながら、勇気づけられもしているわけです。

だからこそ、決してきれい事ではなく、短いこの時間の間に、本能としての生だけではない楽しみや感動を得たいとし、そして、残せる何かを探しているのかもしれません。

2009年10月24日土曜日

「aeroTAP」

昨日の続きのようですが、YouTubeでこんな動画がありました。

http://www.youtube.com/watch?v=UelOXuLQwCQ

ちょっと調べてみると、「マウスに疲れたらジェスチャで―― PC を空中で操作する「aeroTAP」をネクステッジが開発」とあります。

「離れた場所から Web カメラを介して簡単なジェスチャでコンピュータを操作できる、非接触型のインターフェイス。リモートコントローラは必要ない。汎用の PC の既存の汎用アプリケーションを、を安価な Web カメラのみで操作できるようになる。」とも書いてあります。

実際、YouTubeの動画では、Web カメラが操作している人間の手の動きを認知し、位置情報をコンピュータ側に返しているように見えます。レスポンス的にはどの程度実用化出来るレベルなのかは分かりませんが、モニターがもっと巨大(投影されたものでもよいが)で、3Dで目の前にあったら、「ミッション・インポッシブル」(特に好きな映画ではありません)の世界に近づくような気もします。

ネクステッジって筑波にある従業員12名(2007年会社案内による)の、いわゆるベンチャーなんですかね。会社概要には、「ソフトウェア製品のグローバリゼーション("G11n") - インターナショナリゼーション("I18n")およびローカリゼーション("L10n") - に関するスキルに特化したサービスを提供します。」とありますので、ソフトウエアを開発した環境とは違った環境(外国や異文化)へ適合させるための翻訳家のような立場と言ったらいいのでしょうか。

最近はあまり聞かなくなりましたが、「スキマ産業」という言葉が頻繁に使われる時期があったように思います。一般受けではないけれど、それなりの需要もあり、困ったところに手が届く的な商売ですね。ネクステッジも、そういう意味では「スキマ産業」のような範疇に当たるとも言えます。

人のスキを突くと言うととても悪い印象しかありませんが、このような発想は大手ではほとんど出来ないと思いますので、率直に良いことだと思います。
なんとなくですが、体の不自由な方とかにも活用出来そうですしね。

2009年10月23日金曜日

バーチャルな世界

今朝のニュースで「デジタルコンテンツ Expo 2009」の一部が放映されていました。
今週25日まで東京都の日本科学未来館と東京国際交流館で開催されている「デジタルコンテンツ Expo 2009」は、ゲームや映画、Webコンテンツなどの展示や講演、シンポジウム、映像上映などからなる総合博覧会だそうです。

3次元化技術については、仕事上1995年頃から接してきたこともあり、いくつかの展示会やセミナーを受けたりしていましたが、その当時はまだ形状化の容易さや操作性といった技術者レベルの内容でした。それから、ハードの進化とともに、処理能力が飛躍的に増大したことも重なり、一般にもバーチャル・リアリティーなる仮想現実の世界が認知されるようになりました。

現在では、学術的というよりはむしろ普段の暮らしの中での活用が重要視されているような気がします。とりわけ、娯楽である映像やゲームでは、良く耳にするようになりました。テレビや映画での3D映像については、もうじき一般に発売され、家庭でも見られるようになりますし、ゲームもしかりで、Wiiのような体感型ソフトが次々と現れています。

「デジタルコンテンツ Expo 2009」は、大きく分けると次世代コンテンツ技術展2009(ConTEX)、 ASIAGRAPH 2009 in Tokyo 、国際3D Fair 2009 in Tokyo となっています。放送では、次世代コンテンツ技術展2009(ConTEX)に展示されているいくつかが紹介されていました。

ここでは、おもに大学が行っている技術研究の成果を目で見て、実際に触れ、体感出来ます。大学での研究というと僕なんかはすぐ基礎研究を思いついてしまいますが、今では民間と協力しながら、実用化へのプロセスがより密接になってきました。

その中でインターフェースでおもしろかったのが、東京工業大学と電気通信大学が出展した“Haptic Ring”でした。モニターに小熊が表示されているのですが、これを映像として映った自分の手で撫でると、小熊が反応するという展示です。言葉で表すとなかなか分かりずらいのですが、画面上のバーチャルの小熊がまるで目や触覚があるかのように、手の動きを感知し、同時にひとさし指につけられたリングによって、触れている人自身もその触感を得ることが出来るようです。

今までは、視覚、聴覚の部分が多く取り上げられていましたが、この例にもあるようによりリアルに触覚や嗅覚といった五感に迫ったものが取り上げられるのでしょうね。ネット上に現われる物に触れて確かめたり、においをかいだり出来る世の中が近々来るかも知れません。

その時は、「ミッション・インポッシブル」みたいな感じになるのかな。でもにおいはどうなんだろう。夜中、部屋中にいやなにおいが充満している状況を想像すると、今はにおいはいいかなと思ったりします。