2009年7月1日水曜日

号外!! 横木安良夫ワークショップ 迫る!!

今週末の7/4(土)、5(日)に、いよいよ写真家の横木安良夫さんとブリッツ・インターナショナル代表の福川芳郎さんが仙台にいらっしゃいます。プロの写真家や名の通ったギャラリー代表の方を仙台に、ましてや全てが初物づくしのギャラリーにお迎え出来るとは思いもよらないことです。

写真ギャラリーを開設したいと思い始めてから数年経ちますが、5月19日にオープンし、そしてワークショップを開けることが、まだ現実のものとは思えていません。写真展自体の素晴らしさをまだまだ多くの方々にお伝え出来ていないことは非常に残念ですが、今回ワークショップに足を運んでくださるお客様には是非満足していただけるよう鋭意準備を進めている次第です。

しかしながら、始めてのことですので、本当にこれでいいのか、こうやった方が良いのではとか、毎日が試行錯誤の連続です。期待は充分あるのですが、一方で不安もあるのが正直なところです。

ワークショップにお見えになる何名かの方とはお話をする機会があり、口を揃えておっしゃるのが、ワープショップってよく分からないけど、とても楽しみにしているということです。確かに写真ギャラリー自体無かったわけですし、このようなイベントもほとんど機会がなかったわけですからね。

仙台には多くの写真愛好家がいらっしゃいます。さまざまなサークルに入られたりして、独自に技術や作品作りを行っています。そのような方々に、何か手助け出来ないかとも思い、ギャラリーを立ち上げ、この企画を起こしました。

また、これまで写真を見ることがない方々にも、いつでも気軽に優れた作品を見ていただき、心に潤いを感じてほしいとも思っています。

僕もそうですが、初めての事を体験することは非常に体力が要りますよね。(歳を取ったせいもあると思いますが)でも、”さいたまゴールド・シアター”の面々のように、年齢は関係ないのです。会場に展示している60年代から70年代半ばまでの街の雰囲気や若者の姿に、自身を重ねみて下さい。

ワークショップですが、5日(日)の回はまだ余裕があります。
是非、新しい体験をしてみてください。

そして、参加してくださる方々が何か心躍る瞬間を発見し、その手助けが出来たなら、それだけでこの企画は成功だったと、僕は思います。

"リンゴが教えてくれたこと"


昨日テレビはあまり見ないと書きましたが、よく見る番組に2006年1月から放映が始まったNHK"プロフェッショナル 仕事の流儀"があります、この番組はさまざまな分野の第一線で活躍する人々を取り上げ、実際の仕事現場を取材し深く掘り下げ、プロの仕事とは、またそれに関わるその人自身の人となりを紹介しています。

以前に"プロジェクトX"という番組がありましたが、主に過去の実績を紹介していました。これに対して、”プロフェッショナル 仕事の流儀”は現在進行形の事業や仕事について紹介しています。

ここに紹介される人々に共通して言えることは、どんな小さな希望でも決してあきらめないという信念があること、そして最も重要なのは物事に対してとても謙虚であることということです。人は得てしてその道のプロと自他ともに認められると、我が強くなりがちですが、一流から超一流に飛び越えるとその我は消えてしまうようですね。

2007年12月に紹介された木村秋則さんもその中の一人です。かなり有名になってしまいましたので、あえて詳細は書きませんが、木村さんは”自然栽培”でりんごの生産を行っている青森の農家の方です。

僕はこの番組を見るまでは、りんごの栽培にこれほどの農薬が使用されていたとは思ってもいませんでした。そして、”自然栽培”でりんごを育てることがこれほどまでに無謀なことということも知りませんでした。

木村さんはその栽培に成功するまで、約10年の年月を費やしたと言います。その間は無収穫の時もあり、生活苦は想像するに極限まで行っていたと思われます。実際、木村さん自身死まで考え、ロープ片手に山に入った話があるほどです。

今、僕は木村さんの著書である"リンゴが教えてくれたこと"を半分程度読んだところです。2008年7月に"奇跡のリンゴ―「絶対不可能」を覆した農家・木村秋則の記録"が、ノンフィクションライター石川 拓治さんによりまとめられ刊行されましたが、今回は木村さん本人が書かれています。

僕自身、28年間ものづくりの現場に携わってきましたので、その行動や苦労はとても理解出来ます。もちろん木村さんほどの苦労はしませんでしたが、それでも一つのものを作ることは並大抵のことではないことは充分解っています。

中国の故事に「一念岩をも通す」というのがありますが、木村さんはまさにそれを自ら体現した人ですね。読み進むほどに、自分自身恥ずかしく思う事や力づけられる部分があります。


PS  "1Q84"は、この後でゆっくりと読みます。感想はまた。

2009年6月30日火曜日

河瀨直美さん

先週の金曜日、部屋に戻りテレビのスイッチを入れると、まるで予期しない女性の顔が映し出されました。河瀨直美さんでした。しかも、”金スマ”と言うバラエティー番組です。(バラエティ番組を卑下しているわけではありません)実は、僕はテレビを付けていても大抵は見ていないことが多く、もちろんこの番組も始めて見るものでした。

河瀨直美さんが1997年"萌の朱雀"でカンヌ国際映画祭カメラド-ル(新人監督賞)を史上最年少で受賞、2007年"殯の森"で同じくカンヌ国際映画祭グランプリを受賞したことは多くの方が知っていると思います。

彼女の映画の特徴は、描かれる自然の美しさとドキュメンタリー的な部分が絶妙なバランスで組み入れられ、独自の世界観を醸し出していることです。もともとが、ドキュメンタリー映画を制作していましたから、それは河瀨さんにとってはごく自然なことなのかもしれません。

出演者のほとんどが素人や新人と言うこともあり、徹底したリアリズム追及の演出は、意外な効果を発揮しますが、その反面映画(エンタテイメントとしての)自体の危うさも感じていました。事実、“萌の朱雀”以後制作された"火垂"、"沙羅双樹"は残念ながら商業的には成功しませんでした。

やはりこういう映画って、好き嫌いがはっきりするでしょうね。僕自身、"萌の朱雀"をビデオ(当時はDVD化されていなかった)で観た時は、奈良の圧倒的に美しい自然と繰り広げられる物語の静けさに戸惑いを覚えました。物語は非常に淡々と進められていきます。日常のありふれた情景がことさら強調されることもなく、哀しみがゆっくりと沁み込んでくる感じです。

河瀨さんの公式サイトを見ると、自身の好きな映画監督が載っていますが、タルコフスキー、ビクトル・エリセとあり、何となく納得してしまいました。彼らの共通点は、描かれる映像の一つ一つが詩的、もしくは抒情的であることだと思います。その為、描かれる表情や自然には監督自身の感情が投影し、一見何ひとつ無駄のない映像のように見える場面でも、時として観客にとっては難解で陳腐なものに映ってしまう場合があるのも事実だと思います。

なので、これまで僕は河瀨さんの映画をあまり人に勧めたことがありません。カンヌでグランプリを受賞し一時時の人のような扱いをされた時でも、周りの人にもことさら勧めたりはしませんでした。


番組では、河瀨さんの生い立ちから今までの流れの中で、映画監督としての顔とその反面非常に気さくで男っぽい性格に焦点を当てていましたが、僕自身は今後もあまり人には勧めないと思います。でも、こうしてブログに書くと言うことは、やはりいろいろな人に知ってもらいたいのかもしれません。

とても好きな映像作家ですので、なおさら微妙です。

2009年6月29日月曜日

蜷川実花さん


先日蜷川幸雄さんの話に触れたので、娘さんのことも話しておかないと不公平ですよね。
彼には確か2人の娘さんがいるのですが、写真ギャラリーをしていますので、長女で写真家の蜷川実花さんについてです。

蜷川実花さんと言えば、2000年度の木村伊兵衛賞をHIROMIX、長島有里恵さんと同時受賞し、”ガーリー・フォト”の代表としての印象が強いですよね。実際、1996年に写真新世紀、ひとつぼ展で同時受賞もしていますし、その後のマスメディアの対応もそうでしたから、世間の方もその形容で捉えていたと思います。

2008年東京オペラシティーで開かれた回顧展”蜷川実花展-地上の花、天井の色-“では、”ガーリー・フォト”から進化した姿を、テーマごとの作品を通して感じることが出来ました。

蜷川さんと言えば、強烈な色彩で彩られたものをイメージしますし、確かに直感的に蜷川実花、あるいは蜷川実花風と分かってしまいます。2007年六本木アクシス・ギャラリーで開かれた”ゼラチンシルバーセッション展”での、藤井保さんと同一ネガでプリントした作品を見たときも、その印象は拭えませんでした。

しかしながら、そう言う手法や技術は蜷川さん自身の個性として強く観客に訴えかけるものであり、決してマイナス要素にはならないと思いますし、なにより彼女自身のエネルギーを直に感じます。

1998年に出版された初めての写真集”17 9 ’97―Seventeenth September ninety‐seven”では対象がセルフヌードであったり、自分の身近な環境のものだったのですが、2000年以降の作品にはほとんどその傾向は見られません。その辺りも作家としての彼女の強さではないかと思ったりします。

”蜷川実花展”は、2009年4月の岩手県立美術館から始まって、2010年3月まで全国4ヶ所で巡回展が開かれます。是非とも、蜷川さんのパワーを全身で浴びてほしいと思います。

個人的には、初写真集の蜷川さんの不安げなセルフ・ポートレートも好きです。

ギャラリーにお越しの際、お声を掛けて頂けばいつでもお見せ出来ます。

2009年6月28日日曜日

蜷川幸雄さんそして"さいたまゴールド・シアター"

蜷川幸雄さんが主宰をしている"さいたまゴールド・シアター"が、彩の国さいたま芸術劇場小劇場で現在公演をしています。(7/1まで)正式公演としては今回で3回目になります。

演目は、"アンドゥ家の一夜"と言い、ケラリーノ・サンドロビッチさんが書き下ろした新作を蜷川幸雄さんが演出するという、ほとんど考えられない組み合わせのものです。第1回公演が岩松了さんの新作でしたし、その公演を観に行ったケラさんは自身のブログでも絶賛していましたからね。と言っても、僕は今回観られないので、テレビ放映してくれないか願っているだけですが。

"さいたまゴールド・シアター"は、2006年に蜷川さん自ら選抜をして結成された、平均年齢70歳の劇団です。55歳以上の一般人を対象に募集したところ、約1200名の応募があり、その中の48名(現在は42名)が選ばれました。経歴はさまざまで、ほとんどの方はこれまでに演劇経験など無い人達です。そのメンバーと1年のレッスン期間を置き、中間発表会を経た後、2007年6月に第1回公演を行いました。

実は僕は彼らを生では観たことがありません。第1回公演の準備の様子を映したドキュメントとその公演をテレビ番組として見ただけです。1年間で何が出来ると言ってしまえばそれまでですが、劇団員の表情や蜷川さんとの接し方を見ていると、まさに俳優そのものであるように、僕の眼には映りました。実際、芝居から受ける印象は、その年齢や芝居経験の浅さを感じさせない程熱いものでした。

蜷川さん自身現在73歳で、年間10本以上の演出を行っている化け物のような方ですが(大変失礼な言い方ですが)、劇団員の方々は素人でしかも70歳近い年齢ですから、これは尋常ではありません。芝居として成立させること自体冒険だったと思います。

第1回公演"船上のピクニック"と第2回公演の清水邦夫作"95kgと97kgのあいだ"は、職歴など、劇団員の過去の経験を生かしたキャラクター設定とその身体表現で高い評価を受け、"95kgと97kgのあいだ"は国内外を代表する現代舞台芸術が集う祭典「フェスティバル/トーキョー」(2009年3月)に招聘されました。

ドキュメント番組の中で、稽古途中に劇団員の女性が、私にはこの状況でこのセリフは言えないと蜷川さんに話す場面があります。蜷川さんは、自分よりも年長のその女性に対し、自分の枠だけの考えだとその中でしか演技は出来ないし、台本に書かれたフィクションに意味を見出し(想像力)て行かなければ、他者との関係や繋がりを拡げることも出来ない。僕は99%台本に忠実に行う。それが僕の演劇哲学でもあると話していました。

これは、とても意外なことでした。セカイのニナガワと言われ、稽古場での厳しい言葉や行動が世間ではややもすると誇張気味に語られていた人ですからね。蜷川さん自身脚本は書かれないので、プロの演出家として作家を認めている(受け入れる幅が広い)から言ったのだと思いますし、逆に言えば、そういう作家としか仕事をしていないのでしょう。

いずれにせよ、"さいたまゴールド・シアター"は現在日本で最も刺激的な劇団のひとつだと言えます。

そして、個人の可能性は一つの意志の前では決して年齢には依存しないと言うことです。

また蜷川さんにとっては、シェークスピア全演目公演に並ぶライフワークなのかも知れません。
今後の活動を期待していますが、本を書く人は大変でしょうね。

今までの正式公演は、劇団員がほぼ全員が出演しているのですから。

2009年6月27日土曜日

色・・・いろ

6/19から日本マクドナルドが、 クォーターパウンダー「日本バラ色計画」キャンペーンを実施していますね。ニュースリリースのページでは、「キャンペーンの今回の計画について、「日本バラ色計画」は、“バラ色でいくぜ”という「BIG MOUTH!」を掲げ「クォーターパウンダー」を食べて、不況で暗くなっているニッポンを明るく幸せな“バラ色”に塗り替えていこうという計画です。」とあります。

僕自身はほとんどマクドナルドには行かないのですが、テレビコマーシャル等を見ると、何となく元気が出てきますね。色彩は人の心、感情に直接的に影響を与えるものですし、とても明確で、素敵なコンセプトだと思います。

テレビコマーシャルは、安室奈美恵さんが自分自身と戦い、最後は自分を超えて行くと言った造りをしていますが、実写とCGを織り交ぜ、しかもモノクロで展開するクールさは見事です。

それにしても、マクドナルドと言って即座に思い浮かぶ色は赤ですよね。コーポレートカラーとして長年使用していましたから、今回のキャンペーンは期間限定とはいえ、非常に大胆で冒険的なものだと誰しもが思うところです。しかしあえて、その色を変えてでも”日本を明るく幸せなバラ色に変える”というメッセージは単純に嬉しい感じがします。

今、ギャラリーの中はモノクロームの世界です。

モノクロームを直訳すると単色になりますが、実際は白と黒、そしてその中間であるグレーを始め、トーンの差により無限の色を表出させているわけです。その効果は、現実として人が見ている色彩の世界から、非現実の世界へと導いてもくれます。それでも写し出されたイメージは、確実にそこにあった事実なのです。だから、ある人はまだ生まれていなかった時代のイメージに妙に懐かしさを感じたり、逆に色彩の無い世界にその時の色や温度や光りを感じるのでしょう。


そんなことを考えていると、普段何気なく見ている色って、とても不思議に思えてきます。

2009年6月26日金曜日

HOPE 空、青くなる


ハービー山口さんの写真集”HOPE 空、青くなる”が、6月18日に発売されました。
ハービー山口さんは、写真を通して人々の気持ちをポジティブにし、そして人々の心に希望が溢れ、安らぎを取り戻し、優しい社会になることを願い、作品を発表し続けている作家です。
全点モノクロでセレクトされた一つ一つのイメージは、観る者に直接響き、心暖まるものばかりです。

また現在、川崎市民ミュージアムで、”ポートレイツ・オブ・ホープ ~この一瞬を永遠に~”、 東京銀座RING CUBEで”the Roots ~CHEMISTRY~”、丸の内新東京ビルにある丸の内カフェで”ルクセンブルク in 丸の内”の関連企画として、それぞれ写真展が開催されています。

3会場で同時期に行われることは、あまり聞いたことがありません。
近隣の方は是非観に行って下さい。
そうでない方は今は写真集を手に取ってみて下さい。
忘れかけていた大切なものが見えるかもしれません。

そして今秋になりますが、当ギャラリーでもハービー山口さんの企画展を予定しています。
その際は是非オリジナルを観て頂きたいと思います。