2009年5月27日水曜日

叔父と写真

昨日、今年で82歳になる叔父がギャラリーに来てくれました。父方の長兄で、子供もいなかったこともあり、小さい時分にはよく可愛がってくれたものでした。僕がまだ小学生だった頃のある日、叔父と二人で食事に行ったことがありました。1960年代終わりの頃です。なぜ二人だったのかは今では思い出せませんが、場所は当時仙台では超一流だった仙台ホテルだったと記憶しています。地下にあるそのレストランは、幼心にもとても緊張させられる造りでした。叔父は好きなものを頼めば良いと言ってましたが、僕にはメニューにある料理がほとんど理解出来ませんでした。唯一知っている料理と言えば、カレーライスだけだったので、それを頼むことにしました。

ほどなくウエーターが料理を運んで来て、先ずご飯以外何も載っていない皿が目の前に置かれました。僕は間違って運ばれてきたと思いました。こちらから何かを言う間もなく、銀の食器が大柄のスプーンと共に置かれたときに、カレーは別なんだと知りました。大げさですが、当時はテレビの一場面でしか見られないような光景が現実としてあることを知った瞬間でした。

叔父との思い出はこれ以外には、あまりありません。まして、大学に進み、就職で東京に出てからはほとんど会う機会がないままだったのです。又、叔父は公務員であった頃から写真を趣味とし、写真サークルにも入り、毎週のように撮影を行っていたと言います。そんな叔父も数年前に病で倒れ、足が不自由であると、仙台に来てからなんとはなしに両親から聞いていました。

さて、当日、ギャラリーの入り口で父に支えられている叔父の姿を見つけ、僕の差し出した手を握りながら、一段一段と階段を降りる途中、叔父の暖かい手から、遠い昔の幼かった日を思い起こされたように感じました。それから叔父は会場の作品の一点、一点を確かめるように見ていました。特に銀塩作品は、懐かしいものを愛でる様に、顔を近づけている姿が印象的でした。

帰り際、叔父は僕に・・・今度家で俺の写真を見てくれ、一杯あるんだ。・・・と言った時、その眼は叔父が甥を見る眼ではなく、写真を共有のものとしている仲間のそれに近く感じたのです。その時ばかりは若かりしあの頃に戻っていたように思えてなりませんでした。


いつか必ず見に行きます。

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