俳優・山田辰夫さんが26日午前10時15分、東京・西多摩郡の病院で亡くなりました。53歳でした。
ネットでこのニュースを読んだ時は、やはり非常に驚きでした。年も近いので、普段はあまり考えていない死を、身近なものとして改めて感じました。
デビュー当時の山田辰夫さんは、僕自身はあまり興味を覚える役者ではなく、しばらくは映画やテレビでの出演を特に感慨もなく眺めていた程度でした。
2004年11月にテレビ放映された舞台”あの川に遠い窓”を観た時から、その印象は180度変わりました。
”あの川に遠い窓”は、弘前劇場の主宰であり、劇作家の長谷川孝治さんが山田さんのために書き下ろした舞台です。実を言うと、この放送を観ようと思ったのも、長谷川さんが作る芝居に興味があったからでした。
弘前劇場は、地方から良質の演劇を全国(特に中央)に発信し続けている日本で唯一の劇団といって過言ではないと思っています。弘前劇場の劇団員は、基本的に演劇の他に生活の基盤を持っています。その上で、芝居を通し自己表現を行い、活動自体も成功を収めている稀有な存在です。
”あの川に遠い窓”は、山田さんが95年に第1回日本劇作家協会最優秀新人戯曲賞を受賞した長谷川さんの戯曲を読み、感動し、自らが直々に長谷川さんを訪ね、自分のために戯曲を書いてほしいと頼んで出来たものです。
昨夜、録画していたDVDを取り出して、観ました。
放映された2003年シアタートラムでの公演は、山田さん自身再々演でした。舞台上に当てられる明かりはシェード越しに窓から入る光だけともいってよい程の暗さです。その空間の中で、男二人だけの緊張感のある濃密な会話劇が繰り広げられていきます。
教師役の山田さんとその教え子の父親であり、やくざ役の村田雄浩さんが、互いにかみ合わないモノローグのような会話をすることで、それぞれの状況や苦しみや悲しさを表現していきます。山田さんは教師といういわば良識の象徴のような立場でありながら、ラストになるにつれ、一人の人間として誰にでも潜んでいる狂気を過激なまでに演じています。
山田さんは、この公演の2年後に胃を全摘出しています。
そして、昨年暮れに転移が発覚します。
最後の仕事は映画「沈まぬ太陽」(10月24日公開)。転移が分かった後での仕事だったが「依頼された仕事はやり通したい」と撮影に臨んだといいます。
もう山田さんを観られないと思うと本当に残念です。
御冥福をお祈りします。
陽を待つふきのとう
1 週間前
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